子どものおねしょ(夜尿症)

おもらし(昼間尿失禁)とおねしょ(夜尿症)

子どもは成熟と学習を重ねて自立した排尿機能を確立します。
成長するにつれて膀胱や脳が発達し、乳児期までは尿が貯まると反射的に漏れてしまっていた状態が幼児期頃になると自分の意思でコントロールできるようになってきます。ただしその成熟に要する期間には個人差が大きくあります。
夜尿症の定義は複数提唱されていますが5歳を過ぎても週に3回以上の頻度で少なくとも3ヶ月以上にわたって就眠中におねしょをしてしまう状態を言います。
おもらしや夜尿症で悩んでいるお子さんの大部分は病気でないとされていますが稀に何らかの基礎疾患が原因で症状が続いているケースもあるためご心配な方はご相談ください。

少しずつ膀胱に尿をためる量を増やしましょう

幼児がお漏らししてしまう原因として膀胱機能の未発達という点があります。
そもそも排尿の仕組みとは膀胱に尿が一定量溜まることで尿意を感じ、自分の意思でトイレに行って排尿をすることにあります。
ただ、まだ幼いお子さんの場合であれば、その機能が十分には発達しておらず尿量が一定量になった時点で無意識的に排尿をしてしまいます。
例えば、子どもは外へ出かける際に「トイレに行きたくない」と言っていても、いざ外出してみるとトイレに行きたくなるということがよくあると思います。これは上述した排尿の仕組みが未成熟であるが故に排尿コントロールが上手くできておらず生じているのです。
ウロセラピーはこうした症状を改善するための非薬物治療で、生活指導・行動療法の総称です。
具体的には適切な姿勢で排泄すること、尿意や便意を感じたら我慢しないで排泄することなどを習慣つけることです。
トイレで排尿をするという成功体験を積ませることで徐々に大人のように排尿できるようになります。大切なのは子どもが自発的にトイレで排尿するサポートという点です。

夜尿症を治すために

本人の気持ちが一番重要です

夜尿症が治るには機能の発達のみではなく、本人の気持ちが重要です。
トレーニングに適した時期はちょうど子どもが少しずつ自我を持ち始める時期なので、無理にトレーニングを押し付けることでトイレに行くことに抵抗を感じてしまうようになるかもしれません。
本人のモチベーションを保つためにも、生活環境の改善や親御さんのサポートも必要です。

神経系の発達・膀胱と脳の連携

夜尿症は身体が成長していき、神経系が発達して膀胱と脳が上手く連携できるようになれば治っていくことが多いです。
ただ、これに関しては内服薬では治すことが出来ない範囲なので、問診などによって知り得た情報を基に、生活環境の見直しなどをはじめとした治療を行って発達や連携を促します。

チェックするポイント

膀胱の大きさ

膀胱の大きさは機能的膀胱容量と言い、その量は排尿記録を付けることで分かります。
記録する時のポイントとして、日中になるべく尿を我慢させた時の1回の尿量を図るようにしましょう。
我慢することが難しければ、複数回の排尿量を平均することで膀胱容量を調べることも出来ます。
年齢相応の推定膀胱容量は、(年齢+2)×25mlで導き出せ、7歳だと225mlとなります。
これより少なければ、トイレトレーニングなどで膀胱に溜められる尿量を増やしていきます。

夜間尿の凝縮

通常、夜間睡眠中は尿が濃縮されて膀胱にたくさんの量の尿が溜められます。これは尿濃縮能という腎臓の働きによるもので、血液中の老廃物を濾過し尿にして排出するとともに、必要な水分は血中に戻して、身体の水分量を調整するものです。
起床後、最初の尿の比重や浸透圧を調べることで、濃縮の有無を確認できます。
なお、腎臓から排出される抗利尿ホルモンが夜間に分泌されるので、夜中に起こして排出されることは控えてください。
これは腎臓から排泄される水分量を制御することで体内の水分量を調節しています。

夜尿症診察の流れ

初診時

初診時は問診、尿検査、触診を行い、必要がある場合は超音波検査なども行います。
痛みもなく、お子さんへの負担はほとんどありません。
この時に他に尿路結石や水腎症などの疾患が無いかも確認できます。

再診

早朝に採取した尿を専用の容器に入れて持参するようにお願いします。
再診では、持ってきて頂いた尿と、初診時からつけて頂いていた排尿記録を基にして尿の濃縮などを確認させて頂きます。
検査結果を基に、具体的な改善方法のアドバイスや必要な場合は内服薬による治療を行っていきます。

よくある質問

本人の受診は必要?

治療対象が学童期以降になるので学校を休む必要があるかもしれませんが、この治療は本人のモチベーションが大事なので基本的には、本人の受診が必要とお考えください。
しかし、嫌がるお子さまもいらっしゃるのでどうしてもの場合は検査が必要になるまでは親御様のご来院だけでも大丈夫です。

薬を飲むだけで治る?

主な原因が子どもの排尿習慣に依存してしまうため、あくまで薬物療法はサポートであって生活習慣の改善をベースに治療を行う必要があります。
親御さんとしては心配な気持ちがあって早く治したい方もいるかと思いますが、薬のみに頼ってしまっては改善が遅れたり、再発するケースがあります。

本人の「治したい」気持ちが最も大切

これまで上述した通り、夜尿症の改善は生活習慣の見直し、本人の気持ちが重要です。
ただ幼児の場合は注意事項を守ったりするのが難しく、無理やり押し付けるようなことがあればトイレを毛嫌いするようになるかもしれません。
食事の時間等を早めるなど、親御様も本人が意思を持つまでできるサポートをしてあげてください。

日常生活指導法について

保護者の方に守って頂くこと

➀むやみに起こさない

睡眠中には、体内の水分量を調整する抗利尿ホルモンが分泌されるので、むやみに起こしてしまうと抗利尿ホルモンの分泌が悪くなってしまいます。

➁怒らない・叱らない

夜尿をしたからといって怒ったりすると、ストレスになってしまい逆効果です。

➂夕食は早めに

夕食から就寝までの時間が短いと夜尿をしやすくなってしまいます。目安としては、就寝の3時間前までに済ましてしまいましょう。

④便秘をしないように注意を

食物繊維をしっかりとるなど食生活の見直しや、脚などを温かくして寝かしてあげるようにしてください。

お子さま本人への指導

➀日中は水分をたっぷりとる

夜尿症で制限するのは夕食後以降であって、日中は十分な水分をとらせてください。
午前中には、お水やお茶を500~1000ミリリットル飲むようにしましょう。
但し、夕食後はコップ一杯程度にしておきましょう。

➁日没(夏7時まで・冬5時まで)は水分をしっかりとってください

①に書いてある通り、夕食前はしっかり水分をとるようにしましょう。
特に夏場や運動後は、その場でしっかり水分を補給しましょう。

③寝る前に排尿

寝る前に排尿させるようにしてください。また、それ以外も外出前などしっかり習慣化させることが重要です。

④排尿日記をつける

毎日お子さま本人が記録を付けることで排尿に対して意識が向くようになるので、出来るだけお子さま本人がつけることが大事です。
しかし、嫌がることもあると思うのでその際は親御様がサポートしてあげてください。
きっちり記録を付けられたら褒めてあげるようにしましょう。

排尿日記

夜間尿・我慢尿の量、夜間尿の回数、夕食から睡眠までの時間などを記録します。
夜尿の量は、「夜尿した後のオムツの重さ」から「元のオムツの重さ」を引いた数値です。
おむつをしていない場合は、寝具の濡れ具合を記入してください。

膀胱訓練

午前中にしっかり水分を取り、帰宅してから就寝まで出来るだけ排尿を我慢させる訓練です。
ただし、頻繁に尿意があるのに我慢させると他の疾患などを引き起こす可能性があるので、原則1日1回までとしましょう。
即効性のあるものではないので、焦らずに根気強く行っていく必要があります。

薬物療法

薬物療法は、日々の生活習慣の改善などが出来ると判断した場合にのみ、処方させて頂きます。
夜尿症の薬には主に以下の2つの効果があります。

  • 尿の量を調整する働きを持つ薬
  • 膀胱の収縮を抑える働きを持つ薬

薬はあくまでサポートであって、根本的な改善方法は生活習慣の改善ということを念頭に置いて服用させるようにしてください。

ミニリンメルト®

この薬は、抗利尿ホルモン「バソプレシン」と同じような働きを持ち、夜間の尿を濃くさせます。
夜尿症の改善に最もよく使われる薬ではありますが、通常1日に1錠服用します。
舌の上に置くだけで溶け出すので、水無しで飲んでください。
水中毒などの副作用が起こる可能性があります。

抗コリン剤

この薬は、膀胱の収縮を抑制しリラックスさせる働きがあり、尿を多く溜められるようになります。
子どもの副作用はあまり起きないですが、稀にのどの渇きや便秘が発生する場合があります。

三環系抗うつ薬(トフラニールR)

昔から使われており、膀胱や脳に効果が見込まれます。膀胱の勝手な運動を抑えたり、尿道の締まりを良くすることで、尿漏れを防ぎます。
しかし、副作用で重症の不整脈を起こす危険度もあることから、当院では他の薬剤で効果が得られない場合に使用を検討します。

漢方薬

特効薬ではありませんが、体質や原因に合わせた処方が可能で水の飲みすぎなどを抑えることも可能です。
ある程度の効果は期待できるものの、服用を中止した際の再発率は約40%となっています。
よく使われるものとしては、小建中湯や白虎加人参湯等があります。

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